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📌 セカイニオクルでわかること
「来月から中国出張が決まったけれど、いつも使っているスマホをそのまま持って行って平気なのかな」「入国のときに中身を見られると聞いて、急に怖くなってきた」——中国行きが決まった人が、荷物より先に気を揉むのが手元のスマホの扱いです。パスポートやビザの準備はネットを調べればすぐ分かるのに、スマホの話だけは「危ないらしい」という空気だけが漂って、何をどう手当てすればいいのかが見えてきません。私も初めて中国へ向かうときは、写真フォルダを開いたまま何時間も固まっていました。
この記事では、中国へのスマホ持ち込みについて、公的な一次情報だけを使って整理します。禁止品リストにスマホが載っているのかという大前提から、入国時に電子機器を調べられる根拠になった二〇二四年施行の規定、反スパイ法で問われるのは端末ではなくデータだという肝、税関で没収されやすいもの、持ち込める台数の考え方、そして出発前に必ず終わらせておきたいVPNと写真の整理まで。読み終わるころには、漠然とした不安が「やることリスト」に変わっているはずです。
📋 この記事でわかること
- 中国の禁止品リストにスマホが載っているのかという大前提
- 入国時に電子機器を調べられる法的根拠と、実際に検査される確率感
- 反スパイ法・税関で本当に問われるのは端末よりデータだという理由
- 出発前に終わらせるVPN契約・写真整理・通信手段の二重化
⏱ 結論:中国へスマホを持って行くときの最優先事項
スマホ本体の持ち込みは禁止されていません。問題は「中に入っているデータ」と「現地でネットが使えないこと」です。中国に入るとVPNの公式サイトも遮断されるため、契約とインストールは日本にいる今しかできません。中国専用設計のスイカVPNなら日本語サポートもあり、出張者の定番です。
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中国へのスマホ持ち込みで知っておく規制
まずは、何がどこまで決まっているのかを一次情報で押さえます。ここを曖昧にしたまま対策を考えると、意味のない心配に時間を使い、本当に危ない部分を無防備にしてしまいます。禁止品リスト、電子機器を調べられる根拠、反スパイ法、税関、台数、ネット規制の順に見ていきましょう。
結論:スマホ本体の持ち込みは禁止されていない
最初に結論です。中国の輸入禁止品を定めた「中華人民共和国禁止進境物品表」(海関総署令第43号)に、スマートフォンや携帯電話という品目はありません。つまり、自分のスマホを中国に持って入る行為そのものは、法律で禁じられていないということです。空港で「スマホは預けてください」と言われることもありません。
ただし、同じリストの3番目に、こういう項目があります。「中国の政治、経済、文化、道徳に有害な印刷品、フィルム、写真、レコード、映画、録音テープ、録画テープ、レーザーディスク、コンピューター記憶媒体およびその他の物品」。ここに出てくる「コンピューター記憶媒体」という言葉が、スマホの話を一気に自分ごとにします。スマホは電話機であると同時に、写真もメモも書類も入った記憶媒体そのものだからです。
外務省の海外安全ホームページも、中国の安全対策基礎データでこう書いています。「入国時の持込み禁止品としては、武器、中国の政治・経済・文化・道徳に有害な印刷物や記憶媒体等、麻薬類等があります」。規制されているのは機械としてのスマホではなく、そこに入っている中身。この一点を掴んでおくと、この先の話がすべて一本の線でつながります。
中国へのスマホ持ち込みで見られるのは、端末ではなくデータです。「持って行っていいか」ではなく「何を入れたまま持って行くか」が論点だと考えてください。対策の中心も、機種選びではなく中身の整理になります。
入国時に電子機器を調べられる根拠
「スマホを見られる」という噂の出どころは、はっきりしています。二〇二四年に中国で施行された、ひとつの規定です。ここを正確に知っておくと、不安の輪郭がぐっと具体的になります。
二〇二四年七月に施行された規定
中国国家安全部は二〇二四年四月に「国家安全機関行政執法程序規定」(国家安全部令第3号)を公布し、同年七月一日から施行しました。国家安全機関が行政法執行の手続きを自ら規定として公表したのは、これが初めてです。この中に、個人や組織の電子機器を検査する手続きが明文で置かれました。日本国内でも大きく報じられ、「中国に行くとスマホを調べられる」という言い方が一気に広まったのは、このタイミングです。
該当するのは第40条で、原文はこうなっています。「国家安全机关依法对有关个人和组织的电子设备、设施及有关程序、工具开展查验,应当经设区的市级以上国家安全机关负责人批准,制作查验通知书」。日本語にすると、国家安全機関が個人や組織の電子機器・設備およびプログラム・ツールの検査を行う場合には、区を設ける市レベル以上の国家安全機関の責任者の承認を得て、検査通知書を作成しなければならない、という意味になります。
承認と通知書が必要な建前
つまり建前としては、誰でも好きなときに全員のスマホを開けられるわけではありません。市レベル以上の責任者の承認と、書面である検査通知書。この二つが前提に置かれています。第41条は続けて、検査の際には被検査者または立会人が同席しなければならず、電子データの真実性と完全性を保つよう注意し、機器や設備に不必要な損壊を与えてはならないと定めています。手続き面の縛りは、文面上は決して緩くありません。
ただし、第40条には続きがあります。緊急の状況で直ちに検査する必要が確かにある場合には、同じく市レベル以上の責任者の承認を得たうえで、法執行者が人民警察証または偵察証を提示して、その場で検査を実施できるという例外です。ここが現場の裁量を広げている部分で、「通知書がなければ絶対に見られない」とは言い切れない理由でもあります。
実際に検査された人は多くない
では、実務としてどれくらいの確率で検査されるのでしょうか。ここは冷静な材料があります。東京新聞は二〇二四年七月一日、施行当日の北京首都空港で到着した日本人と中国人およそ四十人に取材し、実際に検査を受けたという人はいなかったと報じています。少なくとも施行初日の主要空港で、全員が一律に開かれるような運用ではなかった、ということです。
記事の中では、横浜の三十代のビジネスパーソンが「スマートフォンもパソコンも持ってこないわけにいかず、注意のしようがない」と語っていました。この感覚は、多くの出張者に共通するものだと思います。だからこそ現実的な構えは、過度に怯えないこと、しかし見られても困らない状態にしておくことの両立になります。確率は高くない。でも当たったときのコストが大きい。そういう種類のリスクです。
「検査された人は少ない」は「検査されない」ではありません。緊急時にはその場で実施できる例外が条文に置かれており、判断は現場に委ねられます。確率の話と備えの話は切り離して考えてください。
反スパイ法で問われるのはデータ
電子機器の検査規定よりも、実は出張者にとって重いのが反スパイ法まわりの話です。ここは外務省が名指しで注意喚起を出している領域なので、原文で確認しておく価値があります。
取得・保有だけで対象になる怖さ
外務省は二〇二五年七月二十二日、「中国の『反スパイ法』に関連する注意喚起」を発出しています。そこにはまず、事実としてこう書かれています。「2014年以降、これまでに17名の邦人が『国家安全』に関する罪により中国当局に拘束されたことが確認されており、現在も5名の邦人が拘束されています」。抽象的な警告ではなく、実数が示されているところに重みがあります。
そして、スマホの話に直結するのが次の一文です。「中国政府の国家秘密、インテリジェンス等を持ち出したり、国外の組織にそれらを提供したりするのみならず、国家秘密、インテリジェンス等に該当するとされる情報(文書、データ等を含む)を何らかの手段で取得、保有しただけで、『スパイ行為』とみなされ、厳罰に処されるおそれがあります」。持ち出しや提供ではなく、取得・保有だけで対象になり得ると明記されているわけです。データが端末に入っている状態は、まさに保有です。
地図と軍事施設の撮影は特に危ない
同じ注意喚起には、具体的に危ない対象も挙げられています。ひとつは撮影です。「『軍事禁区』や『軍事管理区』と表示された場所は、軍事施設保護法により、許可のない立ち入りや撮影等が禁止されていますので、特に注意する必要があります」。旅先で何となく撮った一枚が、あとから問題になり得るということです。
もうひとつが地図です。無許可の国土調査等は違法とされ、GPSを用いた測量や地質調査、生態調査、考古学調査などに従事して地理情報を収集・取得・所有した場合も拘束の可能性があるとされたうえで、こう書かれています。「(手書きのものを含む)地図を所持するだけで、その対象とみなされる可能性があります」。紙の地図で所持が問題になるなら、スマホに保存した地図画像やオフライン地図も同じ発想で見られ得る、と考えておくのが安全側の読み方です。
さらに見落としがちなのが、時間の話です。注意喚起は「最近の行為(直近の中国滞在時の行為)のみならず、過去の行為(以前の中国滞在時の行為や中国以外での行為等)についても調査等の対象になり得る」と述べています。何年も前に撮った写真が端末やクラウドに残っていれば、それも「今ある保有」です。中国でVPNを使うと逮捕されるのかを検証した記事でも触れていますが、中国の関連法規はこうした広い射程が特徴で、線引きを自分で厳しく引いておくことが唯一の防御になります。
税関で没収されやすい記憶媒体
国家安全機関の検査とは別に、空港でまず通るのが税関です。こちらは目的が違うので、注意点も別に押さえる必要があります。
外務省の安全対策基礎データは、税関について踏み込んだ書き方をしています。「中国以外では一般的とされる書籍や刊行物であっても、中国税関で『中国にとって有害』とみなされて没収される場合があります(特に地図)。税関窓口の担当官に抗弁しても聞き入れられないので、持込み(持出し)には十分注意してください」。抗弁が通らないと明記されているのが、この項目の怖さです。
もうひとつ、はっきり書かれているのがわいせつ物です。「わいせつな書籍や画像等の持込み、持出しは処罰の対象になります。起訴され、刑の執行が終了するまで、長期間、中国から出国できなかった例があります」。画像、と書かれています。紙かデータかを区別していません。日本では合法的に販売されている類のものであっても、端末に残したまま入国するのは避けるべきだ、というのが素直な読み方です。
そしてUSBメモリやSDカード、ポータブルSSDは、禁止品表に出てくる「コンピューター記憶媒体」そのものです。仕事で使うから持って行くという人は多いと思いますが、中身が入ったまま持ち込むメリットはほとんどありません。必要なデータはクラウド側に置き、物理メディアは空にして持つ。これだけで、税関で説明を求められる場面をかなり減らせます。
税関と国家安全機関は、見ている目的が違います。税関は「有害な物品・課税対象の物品」を、国家安全機関は「国家安全に関わる情報」を見ます。どちらの入口から見られても困らないように中身を整えるのが、中国へのスマホ持ち込み対策の実体です。
スマホは何台まで持ち込めるのか
検索でよく見かけるのが「台数制限はあるのか」という疑問です。結論から言うと、スマホを何台までと数字で定めた規定はありません。ただし、無関係というわけでもなく、免税枠と課税のルールが効いてきます。
免税枠と自用・合理数量の考え方
中国税関の旅客携帯品のルールは、「自用・合理数量」という原則で組まれています。自用は、自分で使うか親族や友人に贈るためのもので、販売や賃貸を目的としないという意味。合理数量は、旅行者の事情・渡航目的・滞在期間などから税関が判断する量、という意味です。どちらにも固定の数値はなく、担当官の裁量が前提になっています。
免税の目安としては、中国居住者が国外で取得した携帯品は総額五千元以内、非居住者が中国国内に残す物品は総額二千元以内が免税とされています。そのうえで携帯電話は課税対象品目に含まれ、行郵税と呼ばれる進境物品輸入税の対象です。税率は二〇一九年四月九日から情報技術製品の区分が十五パーセントから十三パーセントに引き下げられ、携帯電話やノートパソコンはこの区分に入っています。課税価格は税関が持つ完税価格表を基準に決まります。
実務に落とすと、こうなります。使い込んだ私物のスマホを一台、あるいは仕事用と私用で二台という構成は、自用の範囲としてごく自然で、通常は問題になりません。一方で新品未開封の端末を何台も持ち込むと、自用を超えると見られて申告と課税を求められたり、販売目的を疑われたりします。台数そのものより「私物らしさ」が分かれ目、と覚えておいてください。
ネット規制で使えなくなるアプリ
ここまでは「持ち込めるか」の話でした。もうひとつの大問題は、持ち込んだあとに待っています。中国では、日本で当たり前に使っているアプリの多くが、そのままでは動かないのです。
原因は金盾、いわゆるグレートファイアウォールと呼ばれる大規模な検閲システムです。GoogleとGmail、Googleマップ、YouTube、LINE、X、Instagram、WhatsAppといったサービスが軒並みブロックされます。スマホを無事に持ち込めても、現地のネットにつないだ瞬間に半分使えなくなる、というのが実情です。中国でLINEが使えない理由と使う方法でも詳しく書いていますが、これは端末の不具合ではなく、回線側の遮断なので設定をいじっても直りません。
現地で生活するぶんには、微信(WeChat)や支付宝(Alipay)、百度地図や高徳地図といった中国国内向けアプリが実質のインフラになっています。ただ、日本の家族や会社と連絡を取りながら動くなら、これだけでは足りません。そこを埋めるのがVPNで、だからこそ「中国へのスマホ持ち込み」の準備の中心はVPNになるわけです。
VPNの法的な位置づけについては、二〇一七年に工業情報化部が出した通知(信管函〔2017〕32号)が語られることが多いのですが、主眼は許可を得ずに越境接続サービスを提供する事業者側にありました。個人の利用については明確なグレーゾーンとされていますが、近年、認可されていないVPNの利用に対する取り締まりが強化されており、罰金などの摘発事例が報告されています。外国人が利用を理由に逮捕されたという確認された事例は見当たりませんが、法の運用は変わり得るため注意が必要です。詳しい整理は前述の逮捕リスクの記事にまとめています。
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中国へのスマホ持ち込み前に整える準備
規制の輪郭が見えたら、あとは手を動かすだけです。ここからは出発前にやることを順番に並べます。ポイントは、どれも日本にいるうちにしか終わらせられないという点です。現地に着いてからでは選択肢が激減します。
出発前に済ませるVPNの契約と設定
準備の一番目はVPNです。理由は単純で、中国に入ったあとでは契約すること自体が難しくなるからです。ここを後回しにして現地で慌てる人が、毎年かなりの数いると思います。
中国に入ってからでは遅い理由
金盾がブロックするのは、SNSや検索エンジンだけではありません。VPNサービスの公式サイトそのものが遮断の対象になります。つまり中国のネットにつながった状態では、申し込みページを開けない、アプリの案内を読めない、設定マニュアルにアクセスできない、という三重の壁に当たります。アプリストアも中国国内向けのアカウント環境では該当アプリが並ばないことがあり、ダウンロードの段階でつまずきます。
だから手順はこうなります。日本にいるうちに、契約を済ませる。アプリを端末に入れる。ログインまで通す。実際に接続して、つながることを一度確認する。ここまでを済ませて初めて、現地で「アプリを開いてボタンを押す」だけの状態になります。逆に言えば、この四つのうちどれかを残したまま飛行機に乗ると、着いた先で復旧の手段がほとんどありません。
サービス選びで見るべきなのは、速度や価格よりも先に「中国で使えている実績があるか」です。海外で評価の高いVPNでも、中国の遮断技術に追随できていなければ現地では無力です。中国で使えるVPNを比較した記事では、中国での接続実績・日本語サポートの有無・返金保証といった観点で候補を整理しているので、選び方の全体像はそちらを見てください。
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VPNの準備は「契約・インストール・ログイン・接続テスト」の4点セットで完了と考えてください。ひとつでも日本で残すと、中国側からは埋められません。出発前日ではなく、余裕をもって1週間前には済ませておくのが安心です。
写真とアプリを事前に整理する
二番目は、端末の中身の整理です。ここまで見てきたとおり、規制の対象はデータでした。だとすれば、やるべきことは「見られても困らない状態を作る」の一点に尽きます。
まず写真です。旅先や出張先で撮った軍事施設らしき建物、空港や港湾の設備、警察や軍の車両。こういった写真は、削除しておくのが無難です。外務省の注意喚起が撮影禁止を明示しているのは軍事禁区・軍事管理区ですが、過去の行為も調査対象になり得るとされている以上、端末に残しておく理由がありません。あわせて、スクリーンショットで保存した地図画像やオフライン保存した地図データも見直しておきましょう。手書きの地図を所持するだけで対象になり得ると明記されている領域です。
次にアプリです。中国の政治・社会情勢を扱うニュースアプリ、政治的な主張が集まりやすいSNS、削除していない過去のやり取りが大量に残っているメッセージアプリ。すべてを消す必要はありませんが、滞在中に使わないものは一時的にログアウトしておくという考え方は現実的です。アプリが入っていることと、中身が開ける状態であることは別なので、ログアウトだけでも一段ハードルが上がります。
そして、意外と抜けるのがクラウドです。端末の写真を消しても、クラウド側に残っていて同期で戻ってくれば意味がありません。削除はクラウドの「最近削除した項目」まで含めて完了させてください。逆に、消したくない大事なデータは、出発前にクラウドやパソコン、外付けドライブへ退避してから端末側を軽くする——これが一番すっきりします。仕事のファイルも同じで、必要なものだけを滞在中にクラウドから都度取り出す運用にしておくと、端末は身軽なままです。
もうひとつ、生体認証とパスコードの話をしておきます。顔認証や指紋認証は便利ですが、端末を手放す場面では本人の意思と関係なく解除されやすい仕組みでもあります。滞在中だけは生体認証を切って、長めのパスコードだけにしておくという選択もあります。ここは各自の判断ですが、選択肢として知っておく価値はあると思います。
中国の入国審査では、外国人(おおむね14歳以上70歳未満)は指紋の採取・照合と顔画像の撮影が行われます。これは出入国管理の一般的な手続きで、スマホの検査とは別のものです。求められたら素直に応じてください。
通信手段は二重化して備える
三番目は通信の冗長化です。VPNを入れたからといって、常に快適につながるとは限りません。国家的なイベント期間や政治日程の前後には規制が強まる傾向があると言われており、VPNの接続が不安定になることもあります。だからこそ、つながる道を二本以上用意しておくのが実務的です。
ローミングが規制を受けにくい理由
ひとつの保険が、日本の携帯キャリアの国際ローミングです。中国の現地回線を借りて通信しますが、データ通信そのものは日本側の設備を経由する形になるため、中国国内の検閲の影響を受けにくいとされています。実際、ローミングのままだと日本で使っているアプリがそのまま動く、という体験談は多く聞かれます。
ただし、これは各社が公式に「検閲を回避できます」と保証しているものではありません。契約内容や接続の仕方、時期によって挙動が変わる可能性があります。あくまでVPNの代わりではなく、VPNが不調なときの予備として持っておくのが正しい位置づけです。短期の出張なら定額ローミングのプラン、滞在が長いなら容量の大きいプリペイドのデータプランなど、期間と用途で選び分けてください。
もう一枚あると心強いのが、香港やマカオを含むアジア圏で使えるeSIMです。物理SIMを差し替えずに回線を足せるので、現地回線とローミングとeSIMを状況で切り替えるという運用ができます。空港到着直後、ホテルのWi‑Fiにつながるまでのあいだに何も通信手段がない、という最悪のパターンを避けられます。
現地決済アプリの用意
通信と並んで生活を左右するのが決済です。中国の都市部では、現金しか持たない旅行者が想像以上に不便な立場に置かれます。屋台、地下鉄、タクシー、コンビニ——あらゆる場面でQRコード決済が前提になっているためです。
支付宝(Alipay)と微信支付(WeChat Pay)は、近年になって海外発行のクレジットカードを登録できるようになり、外国人でも使いやすくなりました。ただし登録には本人確認の手続きが必要で、認証コードの受信や書類の撮影といった工程が入ります。これも日本にいるうちに済ませておくべき作業です。現地でつながらない状態から本人確認を始めるのは、かなり厳しい戦いになります。
加えて、タクシーや配車、地図、翻訳といった現地で使うアプリも、日本にいるうちに入れておくと安心です。中国で遮断されていないアプリであっても、インストール自体はアプリストアへの接続が必要なので、着いてから慌てるより先に済ませたほうが確実です。手元のスマホを「日本で整えきったパッケージ」として持ち込む、というイメージを持つと、準備の抜けが減ります。
よくある質問
最後に、検索でよく見かける疑問をまとめて片付けておきます。
Q. スマホを2台持って行っても大丈夫ですか。
台数を定めた規定はなく、仕事用と私用で2台という構成は自用の範囲としてごく一般的です。問題になりやすいのは、新品未開封の端末を複数持ち込んで販売目的を疑われるケースです。私物として使い込んだ端末であれば、通常は心配ありません。
Q. 入国時に必ずスマホを見られるのですか。
いいえ。検査には市レベル以上の責任者の承認と検査通知書が必要とされており、全員が一律に開かれる運用ではありません。施行当日の北京首都空港で四十人規模に取材した報道でも、検査を受けたという人はいませんでした。ただし緊急時の例外規定があるため、ゼロとも言えません。
Q. 古いスマホを用意したほうがいいですか。
仕事の機密情報を大量に扱う立場であれば、渡航用の別端末を用意するのは有効な手段です。一方、一般的な出張や観光であれば、普段の端末の中身を整理するほうが現実的で、費用もかかりません。予備端末を持つ場合は、その端末も「中身が軽い状態」であることが前提です。
Q. USBメモリやSDカードは持って行けますか。
物としての持ち込みは禁じられていませんが、禁止品表の「コンピューター記憶媒体」に該当する扱いになります。中身を入れたまま持ち込むメリットは小さいので、空にして持つか、必要なデータはクラウド側に置く運用がおすすめです。
Q. VPNを使っていることで罰せられませんか。
個人利用は明確なグレーゾーンで、近年は認可されていないVPNの利用に罰金が科された事例も報じられていますが、外国人が個人利用を理由に逮捕されたという確認された事例は見当たりません。二〇一七年の通知も、許可なく越境接続サービスを提供する事業者側が主眼でした。とはいえ法の運用は変わり得るので、業務利用の可否は勤務先のルールも確認してください。
Q. スマホの中の写真は全部消すべきですか。
全消しは不要です。優先的に見直すのは、軍事施設らしき建物・空港や港湾の設備・警察や軍の車両・地図画像、それに公序良俗に触れる可能性のある画像です。あわせてクラウド側の同期と「最近削除した項目」まで確認すると、抜けがなくなります。
まとめ:中国へのスマホ持ち込みで備えること
ここまでの内容を、持って行く前にやることとして整理します。
まず前提として、中国へのスマホ持ち込みは禁止されていません。禁止品表に携帯電話という品目はなく、規制されているのは「中国の政治・経済・文化・道徳に有害な印刷物や記憶媒体等」——つまり端末ではなく中身です。ここを取り違えると、機種を悩むといった見当違いの対策に時間を使ってしまいます。
そのうえで押さえるべき点は三つでした。ひとつ、二〇二四年七月一日施行の「国家安全機関行政執法程序規定」により電子機器の検査手続きが明文化された。ただし承認と検査通知書が前提で、施行当日の空港取材では検査された人はいなかった。ふたつ、反スパイ法まわりでは、国家秘密等に該当するとされる情報を「取得、保有しただけで」対象になり得ると外務省が明記しており、地図の所持や軍事施設の撮影は特に危ない。みっつ、税関では書籍や地図、わいせつな画像等が没収・処罰の対象になり、窓口で抗弁しても通らない。
だから準備は、日本にいるうちに終わる三点セットになります。VPNは契約・インストール・ログイン・接続テストまで済ませる。写真とアプリはクラウドの同期まで含めて整理する。通信はローミングやeSIMで二重化し、決済アプリの本人確認も日本で通しておく。どれも現地に着いてからでは手が届きにくい作業です。
中国は、準備した人にはとても動きやすい国です。逆に、手元のスマホが「日本のまま」だと、着いた瞬間に連絡も地図も決済も止まります。出発前の一時間で、滞在中の何日分もの不便を消せると思って、今日のうちに一歩だけ進めておいてください。まずは、中国に入ってからでは申し込めないVPNから片付けるのが正解です。
中国に入るとVPNの公式サイトも遮断されます。契約とアプリの準備は、日本にいる今だけの作業です。
出発前にスイカVPNを準備する →※料金・プラン・規制状況は変更されることがあります。申込前に公式サイトで最新情報をご確認ください。
本記事は執筆時点で公開されている一次情報(中国の法令原文・外務省海外安全ホームページ等)をもとに整理したものです。法令の運用や現地の規制状況は予告なく変わることがあり、実際の判断は現場の担当官に委ねられます。渡航前には必ず外務省海外安全ホームページと在外公館の最新情報、および勤務先のセキュリティ規程をご確認ください。本記事の内容は法律上の助言ではありません。


